損益分岐点とは?黒字に必要な売上と融資・事業計画での考え方を解説
事業を続けるうえで、「いくら売上があれば黒字になるのか」を把握しておくことは重要です。
売上目標を立てていても、その売上で固定費をまかなえるのか、利益が残るのか、借入返済までできるのかが分からなければ、事業計画は曖昧になります。
そこで役立つのが、損益分岐点の考え方です。損益分岐点とは、売上と費用が同じになり、利益も損失も出ない売上高のことです。この記事では、損益分岐点の基本、計算方法、固定費・変動費・粗利率の見方、融資申請や事業計画での活用方法を整理します。
この記事で分かること
- 損益分岐点とは何か
- 固定費・変動費・粗利率の考え方
- 損益分岐点売上高の計算方法
- 黒字化に必要な売上を把握する方法
- 損益分岐点を下げるための実務対策
- 融資申請・事業計画で損益分岐点を活用するポイント
損益分岐点とは
損益分岐点とは、売上と費用が同じになり、利益がゼロになる売上高のことです。
簡単にいうと、黒字と赤字の境目となる売上ラインです。
損益分岐点より売上が低ければ赤字になり、損益分岐点を超えれば黒字になります。
損益分岐点を把握すると、「毎月最低いくら売上が必要か」「現在の売上目標に無理がないか」「固定費や粗利率に問題がないか」を確認しやすくなります。
融資申請や事業計画では、単に「売上を増やします」と書くだけではなく、黒字化に必要な売上や返済可能性を数字で説明することが重要です。
融資審査で銀行が見ている基本的なポイントは、融資審査で銀行が重視するポイントとは?金融機関の評価基準と通過するための実務チェックリストで整理しています。
損益分岐点で分かること
損益分岐点を把握すると、事業の黒字化に必要な売上ラインが見えやすくなります。
損益分岐点で確認できること
- 黒字化に必要な売上高
- 現在の売上が安全圏にあるか
- 固定費が重すぎないか
- 粗利率が低すぎないか
- 価格設定に無理がないか
- 売上目標が現実的か
- 借入返済を含めた資金計画に無理がないか
損益分岐点は、売上目標を考えるときだけでなく、創業計画、設備投資、追加融資、資金繰り改善、価格改定を検討するときにも役立ちます。
損益分岐点を考える前に分けたい費用
損益分岐点を計算するには、費用を固定費と変動費に分けて考えます。
すべての費用を同じように見るのではなく、売上に関係なく発生する費用と、売上に応じて増える費用に分けることが大切です。
固定費とは
固定費とは、売上の増減にかかわらず毎月発生する費用です。
主な固定費
- 家賃
- 人件費
- リース料
- 保険料
- 通信費
- システム利用料
- 毎月固定で発生する広告費
- 固定契約の外注費
- 借入返済に必要な資金
固定費が高い事業は、黒字化に必要な売上も高くなります。
特に創業時や新規事業の立ち上げ時に固定費を増やしすぎると、売上が安定する前に資金繰りが苦しくなりやすいため注意が必要です。
変動費とは
変動費とは、売上や販売数量に応じて増える費用です。
主な変動費
- 仕入れ費
- 材料費
- 外注費
- 販売手数料
- 配送費
- 包装資材費
- 売上に連動する広告費
- 商品やサービス提供に直接かかる費用
変動費が高い場合、売上が増えても利益が残りにくくなります。
売上は増えているのに資金繰りが楽にならない場合は、変動費率や粗利率を確認する必要があります。
粗利とは
粗利とは、売上から仕入れ費や材料費など、売上に直接関係する費用を差し引いた利益です。
たとえば、売上100万円に対して仕入れや材料費が60万円であれば、粗利は40万円です。
粗利率が低い事業では、固定費をまかなうために多くの売上が必要になります。
損益分岐点を下げるには、固定費を下げるだけでなく、粗利率を改善することも重要です。
損益分岐点売上高の計算方法
損益分岐点売上高は、一般的に次の式で計算します。
損益分岐点売上高 = 固定費 ÷ 粗利率
また、変動費率を使う場合は、次のように考えます。
損益分岐点売上高 = 固定費 ÷(1 - 変動費率)
粗利率とは、売上に対して粗利がどれくらい残るかを示す割合です。
変動費率とは、売上に対して変動費がどれくらいかかるかを示す割合です。
計算例
たとえば、次のような事業を考えます。
- 売上:200万円
- 変動費:120万円
- 固定費:60万円
この場合、粗利は次のようになります。
売上200万円 - 変動費120万円 = 粗利80万円
粗利率は、粗利80万円 ÷ 売上200万円 = 40%です。
そのため、損益分岐点売上高は次のように計算できます。
固定費60万円 ÷ 粗利率40% = 150万円
この事業では、毎月150万円の売上があれば固定費をまかなえます。150万円を下回ると赤字になり、150万円を超えると黒字になります。
損益分岐点が高くなる原因
損益分岐点が高い事業は、黒字化に必要な売上も大きくなります。
売上目標が高くなりすぎると、事業計画や融資返済にも無理が出やすくなります。
固定費が高い
固定費が高いと、損益分岐点は上がります。
家賃、人件費、リース料、システム利用料などが大きい場合、毎月それだけ多くの粗利を確保しなければなりません。
特に、創業時や新規事業の立ち上げ時は、売上が安定する前に固定費を増やしすぎないことが重要です。
変動費率が高い
変動費率が高い場合も、損益分岐点は上がります。
仕入れ費や外注費が高く、売上に対して粗利が少ない事業では、固定費をまかなうために多くの売上が必要になります。
売上が増えているのに利益が残らない場合は、変動費率や粗利率を見直す必要があります。
価格設定が低すぎる
価格設定が低すぎると、粗利が十分に残らず、損益分岐点が高くなります。
値下げによって販売件数が増えても、利益が残らなければ資金繰りは改善しません。
価格設定を考える際は、競合価格だけでなく、固定費、変動費、必要な利益、借入返済も含めて判断することが大切です。
損益分岐点を下げる方法
損益分岐点を下げることができれば、黒字化に必要な売上ラインを下げることができます。
資金繰りが不安定な事業では、売上を増やすことだけでなく、損益分岐点を下げることも重要です。
固定費を見直す
固定費を減らすと、損益分岐点を下げることができます。
見直しやすい固定費の例
- 使用頻度の低いサービス
- 効果が見えにくい広告費
- 過剰なリース契約
- 稼働率の低い設備
- 事務所や店舗の維持費
- 固定契約になっている外注費
- 重複しているシステム利用料
ただし、必要な固定費まで削ると、売上や業務効率に悪影響が出ることがあります。
事業に必要な支出と、見直しても影響が少ない支出を分けて判断しましょう。
粗利率を改善する
粗利率を改善できれば、同じ売上でも利益が残りやすくなります。
粗利率を改善する方法
- 仕入れ条件を見直す
- 外注費を見直す
- 利益率の低い商品やサービスを整理する
- 価格改定を検討する
- 高付加価値の商品やサービスを増やす
- 値引きの基準を見直す
- セット販売や上位プランを設計する
粗利率が改善すると、損益分岐点が下がり、資金繰りも安定しやすくなります。
売上単価を見直す
売上単価が低い場合、黒字化するために多くの件数を獲得しなければなりません。
単価を上げることができれば、同じ件数でも売上と粗利を増やせる可能性があります。
ただし、単純な値上げではなく、サービス内容、提供範囲、付加価値、ターゲット顧客を整理したうえで検討することが重要です。
損益分岐点と資金繰りは同じではない
損益分岐点は、黒字化に必要な売上を考えるための指標です。
一方で、資金繰りは、実際のお金の入金と支払いの流れを管理するものです。
この2つは関係しますが、同じではありません。
| 項目 | 見る内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 損益分岐点 | 黒字化に必要な売上 | 利益の考え方が中心 |
| 資金繰り | 入金・支払い・月末残高 | 現金の動きが中心 |
損益分岐点を超えて黒字になっていても、資金繰りが苦しくなることがあります。
たとえば、売上の入金が翌月以降になる場合、帳簿上は黒字でも手元資金は不足することがあります。
また、借入金の元金返済は損益計算書の費用にはなりませんが、実際には預金から出ていきます。
資金繰り表の作り方は、資金繰り表の作り方|初めてでも分かる入金・支払い・残高管理の実務ステップで確認できます。
融資申請や事業計画で損益分岐点が重要になる理由
創業融資、運転資金融資、設備資金融資を検討する際には、売上計画や利益計画の根拠が重要になります。
損益分岐点を把握していると、事業計画の数字に説得力を持たせやすくなります。
売上目標の根拠になる
融資申請では、売上見込みを説明する場面があります。
その際に、単に「月商100万円を目指します」と書くだけでは、根拠が弱くなります。
損益分岐点を把握していれば、最低限必要な売上、黒字化に必要な売上、返済を考えた売上目標を整理できます。
売上予測の考え方は、売上予測の作り方でも整理しています。
返済可能性を説明しやすくなる
金融機関は、融資したお金が返済されるかを重視します。
損益分岐点を把握していると、どの売上水準で利益が出るのか、借入返済の原資を確保できるのかを説明しやすくなります。
特に創業融資では、過去の実績が少ないため、売上計画や利益計画の根拠が重要です。
創業資金全体の考え方は、創業資金の借り方完全ガイド|日本政策金融公庫・銀行融資の審査ポイントと失敗しない準備方法で確認できます。
設備投資後の必要売上を確認できる
設備投資を行うと、リース料、借入返済、減価償却費、保守費用、人件費などが増えることがあります。
その結果、投資前よりも損益分岐点が上がる場合があります。
設備投資を検討する場合は、導入後にどれだけ売上や粗利を増やす必要があるのかを事前に確認しましょう。
設備投資融資で見られる数字は、設備投資で銀行が見る数字とは|融資審査で評価されるポイントと計画の作り方で整理しています。
損益分岐点を見るときの注意点
固定費と変動費の分け方にこだわりすぎない
損益分岐点を計算するには、固定費と変動費を分ける必要があります。
しかし、実際には固定費と変動費の区分が難しい費用もあります。
たとえば、広告費、外注費、人件費などは、事業の内容によって固定費に近い場合もあれば、変動費に近い場合もあります。
初めて計算する場合は、厳密に分けすぎるよりも、まずは大まかに分けて黒字ラインを把握することが重要です。
売上が増えるほど資金繰りが苦しくなる場合がある
売上が増えれば必ず資金繰りが楽になるとは限りません。
売上が増えることで、仕入れ、外注費、人件費、在庫、広告費などが先に増える場合があります。
また、売上の入金が遅い業種では、売上拡大に伴って運転資金が不足することがあります。
損益分岐点では黒字になっていても、資金繰り表では資金不足になることがあります。
売上はあるのに資金繰りが苦しい場合は、売上はあるのに資金繰りが苦しい理由|キャッシュフローが悪化する企業の共通点も確認しておくと、原因を整理しやすくなります。
借入返済は損益だけでは判断できない
借入金の元金返済は、損益計算書では費用として表示されません。
しかし、実際には預金から返済額が出ていきます。
そのため、損益分岐点で黒字ラインを確認するだけでなく、資金繰り表で返済後の手元資金も確認する必要があります。
銀行に説明するときに整理したい資料
融資申請や事業計画で損益分岐点を使う場合は、計算式だけでなく、根拠資料も整理しておくことが重要です。
準備したい主な資料
- 直近の試算表
- 決算書または確定申告書
- 売上計画
- 固定費の一覧
- 変動費・原価率の整理
- 粗利率の計算資料
- 借入金の返済予定表
- 資金繰り表
- 設備投資の場合は見積書
- 創業時は創業計画書
融資用の事業計画書では、売上計画、固定費、粗利率、返済計画がつながっていることが重要です。
事業計画書の作り方は、融資に強い事業計画書の書き方|銀行担当者が評価するポイントと作成のコツで整理しています。
損益分岐点・事業計画の整理を行政書士に相談するメリット
損益分岐点は、自分で計算することもできます。
ただし、融資申請や創業計画、設備投資の事業計画で使う場合は、単に計算するだけでなく、銀行に説明できる形に整理することが重要です。
行政書士に相談することで、売上計画、固定費、粗利率、資金繰り表、返済計画、事業計画書を整理し、金融機関に伝わりやすい資料を作りやすくなります。
事業計画・融資申請の数字整理でお困りの方へ
行政書士だいとう事務所では、中小企業・個人事業主の方向けに、融資申請前の事業計画書、売上計画、損益分岐点、資金繰り表、返済計画の整理をサポートしています。
「黒字に必要な売上が分からない」「創業計画書の売上・利益計画に不安がある」「金融機関に説明する数字を整理したい」という場合は、早めに数字を整理しておくことが重要です。
よくある質問
損益分岐点とは何ですか?
損益分岐点とは、売上と費用が同じになり、利益も損失も出ない売上高のことです。黒字と赤字の境目となる売上ラインで、損益分岐点を超えると黒字になり、下回ると赤字になります。
損益分岐点売上高はどう計算しますか?
一般的には、固定費を粗利率で割って計算します。たとえば固定費が60万円、粗利率が40%であれば、損益分岐点売上高は150万円です。毎月150万円を超える売上があれば黒字化しやすくなります。
損益分岐点が高いと何が問題ですか?
損益分岐点が高いと、黒字化に必要な売上も高くなります。売上が少し下がっただけで赤字になりやすく、資金繰りや借入返済にも影響しやすくなります。固定費や粗利率、価格設定を見直すことが重要です。
損益分岐点を超えていれば資金繰りは安心ですか?
必ずしも安心とはいえません。損益分岐点は利益を見る指標ですが、資金繰りは実際のお金の入出金を見るものです。売上の入金遅れ、借入返済、税金支払いがあると、黒字でも資金不足になることがあります。
融資申請で損益分岐点は必要ですか?
必ず求められるとは限りませんが、損益分岐点を把握していると、売上目標、黒字化の見込み、返済可能性を説明しやすくなります。特に創業融資、設備投資融資、事業計画書の作成では重要な考え方です。
損益分岐点や事業計画の整理を行政書士に相談できますか?
相談できます。行政書士には、融資申請前の事業計画書、売上計画、損益分岐点、資金繰り表、返済計画、金融機関への説明資料の整理を相談できます。税務判断や会計処理が関係する場合は、税理士とも連携しながら進めることが重要です。
まとめ
損益分岐点とは、売上と費用が同じになり、利益も損失も出ない売上高のことです。
黒字と赤字の境目となる売上ラインであり、固定費、変動費、粗利率をもとに計算します。
損益分岐点を把握しておくと、黒字化に必要な売上、固定費の負担、粗利率、価格設定、融資返済の可能性を考えやすくなります。
ただし、損益分岐点を超えて黒字になっていても、資金繰りが苦しくなることがあります。売上の入金時期、借入返済、税金、社会保険料なども含めて、資金繰り表で実際のお金の流れを確認することが必要です。
創業融資や事業計画、設備投資融資を検討する場合は、損益分岐点をもとに、売上計画や返済計画に無理がないかを整理しておきましょう。
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