損益計算書の見方|融資審査で見られる利益と経営改善のポイント

損益計算書は、会社の売上、費用、利益の流れを確認するための決算書です。

中小企業や個人事業主が融資申請を検討する際、金融機関は損益計算書を通じて、事業が利益を出せているか、返済に必要な利益を生み出せているかを確認します。

ただし、損益計算書は「黒字か赤字か」だけを見ればよい資料ではありません。売上総利益、営業利益、経常利益、当期純利益では意味が異なります。この記事では、損益計算書の基本、融資審査で見られる利益、経営改善に活かす見方、資金繰りとの違いを整理します。

この記事で分かること

  • 損益計算書とは何か
  • 売上総利益・営業利益・経常利益・当期純利益の違い
  • 融資審査で銀行が見る利益のポイント
  • 売上はあるのに利益が残らない原因
  • 損益計算書と資金繰り表・キャッシュフロー計算書の違い
  • 融資相談前に整理すべき利益計画・返済計画

損益計算書とは

損益計算書とは、一定期間における会社の売上、費用、利益を示す決算書です。

会社がどれだけ売上を上げ、その売上を得るためにどれだけ費用を使い、最終的にどれだけ利益が残ったのかを確認できます。

一般的には、1年間の事業成績を示す資料として作成されます。月次試算表を作成している場合は、毎月の売上や利益の推移も確認できます。

損益計算書では、「いくら売れたか」だけでなく、「どれだけ利益が残ったか」「本業で利益を出せているか」「借入返済に必要な利益を生み出せているか」を見ることが重要です。

融資申請では、金融機関が損益計算書を通じて、事業の収益性や返済可能性を確認します。

決算書全体では、損益計算書だけでなく、貸借対照表やキャッシュフロー計算書もあわせて見る必要があります。貸借対照表の見方は、貸借対照表の見方|融資審査で見られる資産・負債・純資産のポイントで整理しています。

損益計算書で見る主な利益

損益計算書には、いくつかの利益が表示されます。

それぞれ意味が異なるため、単に最終的な黒字・赤字だけで判断するのではなく、どの段階の利益に問題があるのかを確認することが重要です。

利益の種類 意味 融資審査での見られ方
売上総利益 売上から売上原価を差し引いた利益 商品・サービスの利益率を見られる
営業利益 本業で得た利益 本業で返済原資を生み出せているかを見られる
経常利益 本業以外の収益・費用も含めた通常の利益 借入利息を含めた通常の収益力を見られる
当期純利益 税金や特別損益を反映した最終利益 最終的な黒字・赤字、自己資本への影響を見られる

売上総利益とは

売上総利益とは、売上高から売上原価を差し引いた利益です。

粗利益とも呼ばれます。

商品販売業であれば、売上から仕入れ代金を差し引いた部分が売上総利益になります。製造業であれば、材料費や製造にかかった費用を差し引いた利益です。

売上総利益を見ると、商品やサービスそのものの利益率が分かります。売上が増えていても、売上総利益が少なければ、利益が残りにくい事業構造になっている可能性があります。

売上総利益が少ない場合に考えられる原因

  • 販売価格が低すぎる
  • 仕入れ価格が高い
  • 外注費が高い
  • 値引きが多い
  • 原価管理ができていない
  • 利益率の低い商品やサービスが多い

売上はあるのに利益が残らない場合は、売上高だけでなく、売上総利益や粗利率を確認する必要があります。

営業利益とは

営業利益とは、売上総利益から販売費及び一般管理費を差し引いた利益です。

簡単にいうと、本業でどれだけ利益を出せているかを見る数字です。

販売費及び一般管理費には、人件費、家賃、広告費、通信費、水道光熱費、旅費交通費、消耗品費、減価償却費、保険料、リース料などが含まれます。

融資審査では、営業利益が重要です。借入金の返済原資は、基本的には本業から生み出される利益や資金だからです。

営業利益が黒字であれば、本業で利益を出せている状態です。

一方で、営業利益が赤字の場合は、本業の収益構造に問題がある可能性があります。売上不足、粗利率の低さ、固定費の重さなどを確認する必要があります。

経常利益とは

経常利益とは、営業利益に営業外収益を加え、営業外費用を差し引いた利益です。

営業外収益には、受取利息や雑収入などがあります。営業外費用には、支払利息などがあります。

経常利益は、本業の利益に加えて、借入利息などを含めた会社全体の通常の収益力を見る数字です。

経常利益で確認したいこと

  • 本業の利益に対して支払利息が重すぎないか
  • 営業利益は出ているのに経常利益が少なくなっていないか
  • 借入金が増えすぎていないか
  • 通常の事業活動で安定して利益を出せているか

金融機関は、経常利益も重視します。営業利益が出ていても、借入利息などの負担が大きい場合は、返済余力に不安を持たれやすくなります。

当期純利益とは

当期純利益とは、税金などを差し引いた後に最終的に残る利益です。

会社の最終的な黒字・赤字を示す数字です。

当期純利益が黒字であれば、利益剰余金が増え、自己資本の充実につながります。

一方で、赤字が続くと、利益剰余金が減り、財務内容が悪化する可能性があります。

当期純利益だけを見れば十分というわけではありません。特別利益や特別損失など、一時的な要因によって大きく変動することがあるため、営業利益や経常利益もあわせて見る必要があります。

内部留保や利益剰余金と融資審査の関係は、内部留保とは?融資審査で見られる利益剰余金・現金との違いを解説で確認できます。

融資審査で銀行が損益計算書を見るポイント

金融機関は、融資審査で損益計算書を確認し、返済可能性を判断します。

単に黒字か赤字かだけではなく、利益の内容や継続性を見ます。

見られるポイント 金融機関が確認したいこと
売上高の推移 売上が増加・減少・横ばいのどれか
売上総利益・粗利率 商品・サービスの利益率に問題がないか
営業利益 本業で利益を生み出せているか
経常利益 借入利息を含めた通常の収益力があるか
利益の継続性 一時的な利益ではなく、今後も利益が出るか
返済余力 借入返済に必要な利益や資金を確保できるか

融資審査で銀行が見る全体像は、融資審査で銀行が重視するポイントとは?金融機関の評価基準と通過するための実務チェックリストで整理しています。

本業で利益が出ているか

融資審査で特に重視されるのが、本業で利益が出ているかです。

そのため、営業利益は重要な確認ポイントになります。

営業利益が黒字であれば、本業で利益を生み出している状態です。

一方で、営業利益が赤字の場合は、売上不足、粗利率の低さ、固定費の重さなどを確認される可能性があります。

営業利益が赤字の場合に整理したいこと

  • 売上が不足しているのか
  • 粗利率が低いのか
  • 固定費が高いのか
  • 一時的な赤字なのか
  • 今後どのように改善するのか
  • 資金繰り表では返済可能性を示せるか

赤字決算で融資を検討している場合は、赤字決算でも融資は受けられる?銀行が重視する審査ポイントと通すための実務対策も確認しておくと、説明内容を整理しやすくなります。

利益が一時的なものではないか

当期純利益が黒字であっても、その黒字が一時的な特別利益によるものかどうかは重要です。

たとえば、固定資産の売却益によって黒字になっている場合、翌期以降も同じ利益が出るとは限りません。

金融機関は、継続的に利益を出せるかを確認します。

融資相談では、「最終的に黒字です」だけではなく、営業利益や経常利益が安定しているか、一時的な利益に頼っていないかを説明できることが重要です。

返済に必要な利益があるか

融資審査では、借入金を返済できるだけの利益や資金があるかを見られます。

ここで注意したいのは、損益計算書上の利益と、実際の返済可能額は完全には一致しないことです。

借入金の元金返済は、損益計算書では費用として表示されません。しかし、実際には預金から出ていくお金です。

利益が出ていても、借入返済額が大きすぎる場合は、資金繰りが苦しくなることがあります。損益計算書と資金繰り表をあわせて確認することが重要です。

資金繰り表の作り方は、資金繰り表の作り方|初めてでも分かる入金・支払い・残高管理の実務ステップで整理しています。

損益計算書を見るときの注意点

損益計算書は重要な資料ですが、損益計算書だけで経営状態を判断するのは十分ではありません。

利益と実際のお金の動きは一致しないことがあるためです。

黒字でも資金繰りが苦しいことがある

損益計算書で黒字であっても、資金繰りが苦しくなることがあります。

たとえば、売上が発生していても、入金が翌月や翌々月であれば、すぐには現金が増えません。

また、在庫が増えている場合、現金が商品に変わっているため、手元資金が減ります。

借入金の元金返済も、損益計算書には費用として表示されませんが、実際には預金から出ていきます。

売上はあるのに資金繰りが苦しい理由は、売上はあるのに資金繰りが苦しい理由|キャッシュフローが悪化する企業の共通点で整理しています。

売上だけで判断しない

売上が増えていることは良い材料ですが、売上だけで判断するのは危険です。

売上が増えていても、原価や経費が増えすぎていれば利益は残りません。

また、売上拡大に伴って、仕入れ、人件費、外注費、広告費が先に増える場合は、資金繰りが苦しくなることがあります。

売上を見るときは、粗利率、営業利益、経常利益、資金繰りもあわせて確認しましょう。

役員報酬や個人支出との関係を見る

中小企業では、役員報酬や個人支出の影響も大きくなります。

会社の利益が出ていても、役員報酬や個人への支出が過大であれば、会社に資金が残りにくくなります。

一方で、役員報酬を極端に低くして利益を出している場合、実態として無理がある可能性もあります。

融資申請では、会社の利益だけでなく、代表者個人の収支や会社との資金の分け方も見られることがあります。

家族経営で融資を検討している場合は、家族経営だと融資は不利になる?銀行が評価するポイントと通すための実務対策も確認しておくと、説明内容を整理しやすくなります。

損益計算書を経営改善に活かす方法

損益計算書は、過去の結果を見るだけの資料ではありません。

粗利率、固定費、営業利益、経常利益を確認することで、経営改善や融資申請の準備にも活用できます。

粗利率を確認する

まず確認したいのが、粗利率です。

粗利率が低い場合、売上を増やしても利益が残りにくくなります。

粗利率を改善するために見る項目

  • 仕入れ条件
  • 販売価格
  • 外注費
  • 値引きの多さ
  • 利益率の低い商品やサービス
  • 原価管理の方法

固定費を確認する

固定費が高いと、売上が下がったときに赤字になりやすくなります。

人件費、家賃、リース料、広告費、システム利用料など、毎月発生する費用を確認します。

固定費が重い場合は、損益分岐点も高くなります。そのため、黒字化に必要な売上が現実的かを確認することが重要です。

損益分岐点の考え方は、損益分岐点とは?融資申請・事業計画で役立つ黒字化ラインの見方で整理しています。

利益計画を作る

損益計算書の実績をもとに、今後の利益計画を作成します。

融資申請では、過去の実績だけでなく、今後の売上や利益の見込みも重要になります。

利益計画で整理したいこと

  • 売上見込み
  • 売上原価・粗利率
  • 人件費・家賃・広告費などの固定費
  • 営業利益の見込み
  • 借入利息の負担
  • 経常利益の見込み
  • 借入返済後の資金繰り

融資用の事業計画書は、融資に強い事業計画書の書き方|銀行担当者が評価するポイントと作成のコツで確認できます。

損益計算書とキャッシュフロー計算書・資金繰り表の違い

融資申請や経営改善では、損益計算書だけでなく、キャッシュフロー計算書や資金繰り表もあわせて見ることが重要です。

資料 見る内容 使う場面
損益計算書 売上・費用・利益 事業の収益性を確認する
キャッシュフロー計算書 過去の現金の増減 本業で現金を生み出せているかを見る
資金繰り表 将来の入金・支払い・月末残高 今後の返済可能性や資金不足を確認する

キャッシュフロー計算書の見方は、キャッシュフロー計算書の見方|営業CF・投資CF・財務CFを中小企業向けに解説で整理しています。

融資申請では、過去の利益、過去のお金の流れ、今後のお金の流れをつなげて説明できる状態にしておくことが大切です。

銀行へ説明する前に準備したい資料

損益計算書をもとに融資相談を行う場合は、利益の内容だけでなく、資金使途や返済計画まで整理しておく必要があります。

準備したい主な資料

  • 直近2〜3期分の決算書または確定申告書
  • 直近の試算表
  • 損益計算書の利益推移を整理した資料
  • 売上・粗利率・営業利益の推移
  • 資金繰り表
  • 既存借入の一覧
  • 借入金の返済予定表
  • 事業計画書
  • 売上予測・利益計画
  • 資金使途の内訳

融資相談前に準備すべきものは、融資相談の前に準備すべきものとは?金融機関で評価される実務チェックリストと面談対策で整理しています。

損益計算書・利益計画の整理を行政書士に相談するメリット

融資相談では、損益計算書の数字をただ提出するだけでなく、金融機関に説明できる状態に整理しておくことが重要です。

行政書士に相談することで、売上、粗利率、営業利益、経常利益、資金使途、返済計画、資金繰り表、事業計画書を整理しやすくなります。

特に、営業利益や経常利益の見方が分からない場合、黒字でも資金繰りが苦しい場合、金融機関に説明する利益計画を作りたい場合は、銀行に相談する前に数字を整理しておくことが大切です。

決算書・利益計画をもとに融資申請を進めたい方へ

行政書士だいとう事務所では、中小企業・個人事業主の方向けに、融資相談前の決算書整理、事業計画書、資金繰り表、売上予測、利益計画、金融機関への説明資料の作成をサポートしています。

「営業利益や経常利益をどう見ればよいか分からない」「黒字でも資金繰りが苦しい原因を整理したい」「金融機関に説明する利益計画を作りたい」という場合は、早めに資料を整えておくことが重要です。

よくある質問

損益計算書とは何ですか?

損益計算書とは、一定期間における会社の売上、費用、利益を示す決算書です。売上総利益、営業利益、経常利益、当期純利益を確認することで、事業の収益性を把握できます。

融資審査では損益計算書のどこを見られますか?

売上高、売上総利益、営業利益、経常利益、当期純利益の推移を見られます。特に、本業で利益を出せているかを示す営業利益、通常の収益力を示す経常利益は重要です。利益の継続性や返済余力も確認されます。

営業利益が赤字でも融資は受けられますか?

可能性がないわけではありませんが、慎重に見られやすくなります。売上不足、粗利率の低さ、固定費の重さなど赤字の原因を整理し、今後の改善計画や資金繰り表で返済可能性を示すことが重要です。

黒字なら資金繰りは安心ですか?

必ずしも安心とはいえません。売上の入金が遅い、在庫が増えている、借入返済や税金支払いが重い場合は、黒字でも資金繰りが苦しくなることがあります。損益計算書だけでなく、資金繰り表も確認する必要があります。

売上が増えているのに利益が残らないのはなぜですか?

原価や外注費が高い、値引きが多い、固定費が増えている、利益率の低い商品やサービスが多いなどの理由が考えられます。売上高だけでなく、売上総利益、粗利率、営業利益を確認することが重要です。

損益計算書や利益計画の整理を行政書士に相談できますか?

相談できます。行政書士には、融資相談前の事業計画書、売上予測、利益計画、資金繰り表、金融機関への説明資料の整理を相談できます。税務判断や会計処理が関係する場合は、税理士とも連携しながら進めることが重要です。

まとめ

損益計算書は、会社の売上、費用、利益の流れを確認するための決算書です。

中小企業が損益計算書を見る際は、売上高だけでなく、売上総利益、営業利益、経常利益、当期純利益を確認することが重要です。

特に融資審査では、本業で利益を出せているかを見るために、営業利益や経常利益が重視されます。黒字であっても、一時的な特別利益による黒字なのか、継続的な本業の利益なのかを分けて見る必要があります。

ただし、損益計算書で黒字であっても、資金繰りが安定しているとは限りません。売掛金の入金時期、在庫、借入返済、税金、社会保険料などによって、黒字でも資金繰りが苦しくなることがあります。

融資申請や経営改善を考える場合は、損益計算書だけでなく、貸借対照表、キャッシュフロー計算書、資金繰り表、事業計画書をあわせて整理し、金融機関に説明できる状態を作っておきましょう。

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