事業計画書の書き方|補助金・融資で共通する7項目と具体例
事業計画書は、将来の希望を書く書類ではなく、現在の事業から目標へ到達する道筋を説明する書類です。
自社の現状、課題、顧客・市場、実施する取組、必要経費、売上・利益計画、実施体制、資金計画を一つの流れでつなげます。補助金では制度目的と投資効果、融資では返済可能性と資金繰りが特に重視されますが、計画の土台は共通しています。
自社概要から資金計画まで、読み手が追える順番で整理します。
売上、顧客数、単価、原価、作業時間、返済額を計算します。
担当者、日程、自己資金、外部業者、リスク対応を示します。
事業計画書とは
事業計画書とは、現在の事業内容と課題を整理し、今後どのような取組を行い、どのような成果を生み出すのかを文章と数字で示す書類です。
| 現在 | 商品・サービス、顧客、売上、設備、人員、強み |
|---|---|
| 課題 | 集客、人手不足、生産能力、利益率、資金繰り等 |
| 取組 | 設備投資、販路開拓、IT導入、新商品、店舗展開等 |
| 成果 | 売上、利益、顧客数、処理件数、作業時間等の変化 |
| 実行方法 | 担当者、外部業者、スケジュール、必要資金 |
「なぜこの事業が必要なのか」「本当に成果が出るのか」「期限内に実行し、必要なら返済できるのか」に答える内容へ整えます。
補助金用と融資用の事業計画書の違い
自社概要、顧客、売上予測など共通する項目はありますが、重視される視点が異なります。
| 確認項目 | 補助金申請 | 融資申請 |
|---|---|---|
| 主な目的 | 制度目的に合う投資・取組を支援するか | 貸した資金を事業収益から返済できるか |
| 重視される内容 | 課題、取組、対象経費、投資効果、政策との一致 | 資金使途、売上・利益、返済原資、財務・資金繰り |
| 対象経費 | 公募要領で認められた経費に限定 | 認められた設備資金・運転資金 |
| 数値計画 | 売上増加、生産性、省力化等の投資効果 | 収支、借入返済後の利益、月別資金残高 |
| 事業実施後 | 実績報告、成果報告、証拠書類 | 返済、資金使途管理、業績確認 |
補助金では「この経費を支援する理由」、融資では「この資金を返済できる理由」が伝わるよう、数値と説明の重点を調整します。
両制度の比較は、補助金と融資の違いで整理しています。
事業計画書を書く前に準備するもの
文章を書き始める前に、現在の実績、投資内容、見積り、数値の根拠を集めます。
- 現在の商品・サービスと料金
- 顧客層・販売地域・販売方法
- 月別・商品別の売上実績
- 原価・粗利益・主要経費
- 問い合わせ件数・成約率・客単価
- 設備能力・作業時間・担当人数
- 現在の課題と発生している損失
- 実施したい設備・広告・IT等の内容
- 見積書・概算金額・納期
- 競合・市場・商圏に関する資料
- 自己資金・借入予定・既存借入
- 実施希望時期と担当者
必要書類は、補助金申請の根拠資料とは?で確認できます。
事業計画書の基本構成は7項目
何を、誰に、どのような方法で提供している事業者か示します。
現在の数字と事実から、解決すべき問題を特定します。
需要、対象顧客、商圏、競合との違いを整理します。
課題を解決する設備・販促・IT・新商品等を具体化します。
顧客数、単価、原価等から将来数値を計算します。
担当者、業者、契約、納品、運用開始まで示します。
自己資金、補助金、融資、支払い、返済を整理します。
1.自社概要・強みの書き方
自社概要では、沿革を長く書くのではなく、今回の事業を実行できる理由につながる情報を選びます。
- 主な商品・サービス
- 主な顧客層・販売地域
- 売上構成・主要商品
- 代表者・従業員の経験や資格
- 店舗・設備・販売方法
- 競合と比べた強み
- 過去の実績・受注・顧客評価
- 今回の事業へ活用できる経営資源
弱い例:地域密着で丁寧なサービスを提供しています。
改善例:奈良県内の小規模事業者を中心に〇〇サービスを提供し、年間約120件に対応しています。代表者は同業務に10年従事し、既存顧客からの紹介が新規受注の約7割を占めています。
2.現状・課題の書き方
課題は「売上を増やしたい」「人手が足りない」だけで終わらせず、現在どの程度の問題が起きているかを示します。
| 抽象的な課題 | 具体化した課題 |
|---|---|
| 新規顧客が少ない | 新規受注の7割が紹介で、Web問い合わせは月平均2件にとどまる。 |
| 作業効率が悪い | 顧客情報の転記に1件30分、月40件で約20時間を要している。 |
| 設備が古い | 1日10件しか処理できず、繁忙期には月15件の依頼を断っている。 |
| 利益率が低い | 外注費が売上の25%を占め、受注増加が利益増加につながりにくい。 |
| 資金繰りが不安 | 売上入金まで平均60日かかり、月末の支払いが先行する。 |
複数の課題がある場合でも、今回の設備・販促・IT導入等で直接改善できる課題を中心にします。
3.顧客・市場・競合の書き方
市場が大きいことだけでは、自社が売上を獲得できる根拠にはなりません。自社が狙う顧客と、その顧客へ届く販売方法を整理します。
| 対象顧客 | 地域、年齢、業種、企業規模、困りごと、購入目的 |
|---|---|
| 顧客ニーズ | 価格、品質、納期、専門性、利便性など、選ぶ理由 |
| 市場・商圏 | 人口、事業所数、検索需要、問い合わせ傾向、業界動向 |
| 競合 | 価格、サービス、対応地域、集客方法、納期、強み |
| 自社の優位性 | 顧客ニーズに対して自社が提供できる違い |
| 販売経路 | 店舗、紹介、営業、検索、広告、EC、代理店等 |
顧客像を絞ることで、商品内容、広告媒体、価格、売上予測を具体化できます。
4.実施する取組の書き方
取組は、「設備を購入する」「ホームページを作る」ではなく、課題をどのように改善するかまで説明します。
| 取組 | 書く内容 |
|---|---|
| 設備導入 | 機能、処理能力、導入前後の件数・時間・品質、設置場所 |
| ホームページ | 対象顧客、掲載内容、問い合わせ導線、運用方法、目標数値 |
| ECサイト | 商品、集客、購入導線、在庫・発送、販売目標 |
| 広告・チラシ | 媒体、配布地域、対象顧客、訴求内容、反応測定 |
| ITツール | 対象業務、機能、利用者、削減時間、運用体制 |
| 新商品・サービス | 顧客、提供内容、価格、販売方法、既存事業との違い |
弱い例:ホームページを制作して集客を増やします。
改善例:〇〇サービス専用ページへ料金、対応事例、申込みの流れを掲載し、問い合わせフォームとLINE導線を整備します。地域名とサービス名で検索する見込み顧客を対象に、Web問い合わせを月2件から月6件へ増やします。
5.売上・利益計画の書き方
将来の売上は、希望額から逆算するのではなく、顧客数、単価、販売数量、成約率等へ分解します。
| 数値項目 | 根拠に使う資料 |
|---|---|
| 顧客数・来店数 | 現在の実績、予約件数、広告反応、設備能力 |
| 客単価 | 料金表、商品構成、既存顧客の購入実績 |
| 成約率 | 問い合わせ履歴、商談実績、過去の広告実績 |
| 原価・仕入 | 仕入価格、外注費、材料使用量、粗利益実績 |
| 固定費 | 人件費、家賃、通信費、システム利用料、返済額 |
| 省力化効果 | 現在の作業時間、担当人数、導入後の業務フロー |
売上が増えても、原価、広告費、人件費、借入返済が増えれば資金不足になることがあります。売上計画、利益計画、資金繰りを分けて確認します。
売上予測は、小規模事業者のための売上予測の作り方で詳しく説明しています。
6.実施体制・スケジュールの書き方
事業計画書では、計画内容だけでなく、誰がいつ実行するのかを示します。
| 責任者 | 全体管理、意思決定、業者調整を行う人 |
|---|---|
| 社内担当 | 営業、制作、運用、会計、効果測定等を担当する人 |
| 外部業者 | 設備、工事、システム、広告、専門家等の役割 |
| 準備期間 | 見積り、融資、許認可、契約、設計等 |
| 実施期間 | 発注、制作、設置、テスト、研修、運用開始 |
| 成果確認 | 売上、顧客、作業時間等を測定する時期と担当者 |
補助金申請の場合は、交付決定前に契約・発注せず、補助対象期間内に納品・支払い・実績報告を完了できる計画にします。
7.資金調達・資金繰りの書き方
資金計画では、必要資金の総額と調達方法を明確にし、月ごとの支払い・入金・返済へ落とし込みます。
| 必要資金 | 主な内容 |
|---|---|
| 設備資金 | 機械、店舗、工事、車両、システム等 |
| 運転資金 | 仕入、人件費、家賃、広告、外注、諸経費 |
| 自己資金 | 事業へ投入できる預金・内部留保 |
| 補助金 | 後払いとなる補助対象経費の一部 |
| 融資 | 設備・運転資金の不足額 |
| 返済 | 元金・利息・返済開始時期 |
設備・工事:500万円
開業後の運転資金:200万円
必要資金合計:700万円
自己資金:200万円
融資希望額:500万円
補助金見込額:後日200万円
補助金は不採択・減額・入金遅れを想定し、融資返済を補助金だけに依存しないようにします。
資金繰りは、資金繰り表の作り方で確認できます。
事業計画書の具体例
現状:既存設備では1日10件までしか対応できず、繁忙期に月15件程度の依頼を断っている。
課題:処理能力の不足により受注機会を失い、担当者の残業も月20時間発生している。
取組:1時間当たりの処理能力が高い専用設備を導入し、受入可能件数を増やす。
効果:月15件の追加受注、月20時間の作業削減、既存顧客への納期短縮を見込む。
実施体制:代表者が設備業者と調整し、担当従業員2名が操作研修を受ける。
資金:設備代500万円を自己資金200万円と融資300万円で支払い、補助金入金後も運転資金100万円を残す。
現状:新規顧客の約8割が紹介で、Web問い合わせは月2件にとどまる。
課題:比較検討段階の顧客へ、料金・事例・相談方法が十分に届いていない。
取組:サービス専用ページ、事例、問い合わせフォーム、LINE導線を整備する。
効果:Web問い合わせを月2件から6件、成約を月1件から3件へ増やす。
実施体制:代表者が原稿と事例を準備し、制作会社が設計・制作・公開を担当する。
資金:制作費100万円を自己資金で支払い、入金までの通常経費を別途確保する。
リスクと対応策の書き方
事業計画には、計画どおりに進まない場合の対応も含めます。
| 想定リスク | 対応策の例 |
|---|---|
| 売上が計画を下回る | 広告媒体・対象顧客・商品構成を見直し、固定費を抑える。 |
| 設備納期が遅れる | 発注可能日、代替機種、事業期間、業者連絡体制を確認する。 |
| 原価・価格が上昇する | 見積有効期限、予備費、販売価格、仕入先を見直す。 |
| 人員を確保できない | 業務分担、外注、省力化、採用時期を調整する。 |
| 補助金が不採択・減額 | 投資規模、自己資金、融資、実施時期の代替案を用意する。 |
| 融資希望額に届かない | 投資額を段階化し、自己資金・支払条件・他の調達を見直す。 |
どの数値・状況を確認し、問題が起きたときに誰が何を変更するかまで示します。
事業計画書と見積書・決算書を一致させる
| 照合項目 | 確認する資料 |
|---|---|
| 現在の売上 | 事業計画書、決算書、確定申告書、月別売上 |
| 設備・サービス | 取組内容、経費明細、見積書、仕様書 |
| 数量・金額 | 事業計画書、資金計画、見積書、借入申込書 |
| 売上予測 | 数値計画、顧客・市場資料、設備能力 |
| 資金調達 | 自己資金、融資希望額、補助金見込額、支払時期 |
| スケジュール | 契約予定、納期、公募・交付決定、営業開始 |
事業計画書を修正した場合は、経費明細、売上計画、資金計画、見積書、申請画面の数字も再確認します。
事業計画を一枚で整理する方法
詳細な計画書を書く前に、次の項目を一枚にまとめると全体の矛盾を確認しやすくなります。
| 現在の事業 | 誰に、何を、いくらで、どの方法で提供しているか |
|---|---|
| 解決する課題 | 数字で示せる問題と、その原因 |
| 今回の取組 | 設備・販促・IT・新商品等の内容 |
| 必要資金 | 設備資金、運転資金、自己資金、融資、補助金 |
| 顧客・販売 | 対象顧客、販売方法、競合との差 |
| 数値目標 | 顧客数、単価、売上、利益、作業時間 |
| 実施方法 | 担当者、業者、日程、許認可 |
| リスク対応 | 売上未達、納期、資金不足、不採択等への対応 |
事業計画書で避けたい8つのNG
将来の希望だけを書く
現在の実績と目標までの計算がありません。
課題が抽象的
何がどの程度問題なのか分かりません。
買いたい物が中心
課題解決や導入後の事業変化が不明です。
顧客と販売方法が不明
誰がなぜ買い、どう届けるか説明できていません。
売上予測に根拠がない
顧客数・単価・成約率・原価の計算がありません。
必要資金が不足する
設備代だけで、運転資金・消費税・返済を考えていません。
資料ごとに数字が違う
見積書、売上計画、融資額等が一致していません。
担当者・日程が不明
誰がいつ実行するのか、現実性を確認できません。
事業計画書を見直す順番
補助金・融資の目的と資金使途に合っているか確認します。
現在の数字から解決すべき問題を特定します。
誰に何を提供し、課題をどう改善するか確認します。
目標値と計算根拠、原価・固定費を確認します。
自己資金、融資、補助金、月別残高を確認します。
担当者、日程、許認可、代替策を確認します。
見積書、決算書、申請画面の数字を照合します。
事業内容を文章と数字にまとめられない方へ
現状、課題、顧客、取組、売上・利益計画、資金調達を確認し、補助金・融資の目的に合わせて整理します。
事業計画書の提出前チェックリスト
- 自社の商品・顧客・売上構成を説明している
- 自社の強みを顧客ニーズと結び付けている
- 現状課題を数字・事実で示している
- 対象顧客と販売地域が具体的である
- 市場・競合と自社の違いを整理している
- 取組内容が課題解決につながっている
- 設備・広告・IT等の機能を具体的に説明している
- 売上を顧客数・単価等へ分解している
- 原価・固定費・利益を計算している
- 設備資金と運転資金を分けている
- 自己資金・融資・補助金を整理している
- 融資返済後も資金を維持できる
- 補助金の後払いへ対応できる
- 担当者・外部業者の役割が明確である
- 契約・納品・営業開始の時期が現実的である
- 売上未達・資金不足等の対応策がある
- 見積書・決算書・計画書の数字が一致している
- 補助金用・融資用で説明の重点を調整している
事業計画書の書き方で確認しておきたい点
事業計画書には何を書くか
自社概要、現状課題、顧客・市場・競合、実施する取組、売上・利益計画、実施体制、スケジュール、資金調達等を書きます。
事業計画書は自分で作成できるか
作成できます。現在の実績、見積書、売上・利益、必要資金を準備し、読み手が計算と実行方法を確認できる形にします。
補助金と融資で同じ計画書を使えるか
共通部分は使えますが、補助金では制度目的・対象経費・投資効果、融資では返済原資・資金使途・資金繰りを重点的に調整します。
売上予測は何年分必要か
制度・金融機関の様式によります。指定期間に合わせ、現在実績と取組後の変化を同じ計算方法で示します。
赤字でも事業計画書を作成できるか
作成できますが、赤字の原因、改善策、資金繰り、返済可能性を具体的に説明する必要があります。
見積書はどの段階で必要か
投資額と資金計画を具体化するため、早い段階で概算見積りを取得します。正式発注は補助金の交付決定前に行わないよう注意します。
不採択・融資否決後に再利用できるか
そのまま再利用せず、課題、取組、売上・利益、資金、返済計画、見積書を最新情報へ更新します。
まとめ|現在から目標までの道筋を数字で示す
事業計画書では、自社の現状、課題、顧客、取組、売上・利益、実施体制、資金計画を一つの流れで説明します。
- 現在の事業と強みを簡潔に整理する
- 課題を数字・事実で具体化する
- 顧客・市場・競合を自社の販売方法へ結び付ける
- 取組によって何が変わるか説明する
- 売上を顧客数・単価等へ分解する
- 利益・原価・固定費を確認する
- 担当者とスケジュールを明確にする
- 設備資金・運転資金を分ける
- 自己資金・補助金・融資・返済を整理する
- リスクと代替策を準備する
- 見積書・決算書・数値計画を一致させる
- 補助金・融資の目的に応じて重点を調整する
文章を長くする前に、一枚で全体像を整理し、数字と資料に矛盾がないか確認することが重要です。
補助金・融資の事業計画書を整理したい方へ
行政書士だいとう事務所では、事業内容、売上・利益計画、対象経費、資金使途、自己資金、返済計画を確認し、ご希望の範囲に応じて事業計画書の作成をサポートしています。
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