キャッシュフローが悪化する企業の共通点とは?
融資相談の現場では「なぜか毎月お金が残らない」「売上はあるのに資金繰りが苦しい」という相談が非常に多くあります。
キャッシュフローの悪化にはいくつか典型的なパターンがあり、それを理解するだけで資金繰りの改善スピードは大きく変わります。
この記事では、キャッシュフロー悪化の代表的な共通点を分かりやすく整理し、どのように改善すべきかまで解説します。
利益が出ていてもキャッシュが不足する根本原因
まず理解すべき点として、「黒字=お金がある」ではありません。
黒字でも資金ショートする企業が多い理由は、利益とキャッシュフローの仕組みが異なるためです。
- 売掛金の入金は月末または翌月
- 経費の支払いは即時発生
- 在庫を抱えると現金化が遅れる
- 大きな投資をしても費用は分割計上(減価償却)
この「ズレ」が大きいほど、キャッシュフローは悪化しやすくなります。
売上の入金サイトが長すぎる
最も多いのが 売上の回収が遅いケース です。
- 回収30日 → 一般的
- 回収60日 → 資金繰りが厳しくなりやすい
- 回収90日 → 運転資金不足の典型パターン
入金が遅いと、支払いと入金のタイミングが合わず、資金ショートの可能性が高まります。
改善策としては次のような方法があります。
- 前受金・着手金制度の導入
- 回収条件の見直し交渉
- 入金サイトの短縮(30日サイクル化)
- 売掛金の管理強化
金融機関は入金サイトも重視しています。
在庫を増やしすぎて現金化が遅れている
在庫が多い企業は例外なくキャッシュフローが悪化します。
- 在庫は利益計算上は資産
- しかし現金は出ていく
- 回収までの期間が長い
- 売れ残れば損失
在庫増加は「見えない資金繰り悪化」の代表例であり、
金融機関も在庫増を非常に警戒します。
改善のポイントは次の通りです。
- 回転率の低い在庫を減らす
- 発注量の基準を見直す
- 原価管理を強化する
- 仕入れサイトと販売サイトのバランスを整える
固定費が売上に対して高すぎる
キャッシュフロー悪化の典型的な要因は「固定費の負担が重い」ことです。
特に以下の費用は注意すべきです。
- 人件費
- 家賃
- 事務所・店舗の維持費
- 外注費の固定契約
- 車両リース料
- 借入金の返済額
売上が落ちると、固定費の圧迫によって一気に資金繰りが悪化します。
対策としては下記が有効です。
- 非効率な業務の外注化
- 家賃の見直し(移転も含む)
- 変動費化できるものは変動費化する
- 融資の返済条件変更(リスケ)も検討
設備投資の判断が遅い・基準が曖昧
キャッシュフローが悪化する企業は、設備投資の判断が下記のようになりがちです。
- 効果が曖昧なまま購入してしまう
- 売上の見込みより大きい投資を行う
- 減価償却費が増え、利益を圧迫
- 現金支出の負担が重い
金融機関は「投資が返済原資を生むか」を最重要視するため、
効果が説明できない設備投資に対して評価が厳しくなります。
税金・社会保険の支払い月を見落としている
キャッシュフロー悪化の大きな原因が 年に数回の大きな支払いの見落とし です。
特に次の支払いが重なった月は危険です。
- 社会保険の賞与支払い
- 固定資産税
- 消費税
- 決算後の法人税・住民税
- 助成金受給後の社会保険料調整
月次では回っていても、これらが来ると一気に資金不足になります。
「資金繰り表の重要性」がここにあります。
キャッシュフロー悪化企業の共通点まとめ
キャッシュフローが悪化する企業には、以下のような共通点があります。
- 入金サイトが長い
- 在庫を抱えすぎている
- 固定費の負担が大きい
- 設備投資の判断が曖昧
- 大きな支払い月を把握していない
- 資金繰り表を作成していない
これらを改善するだけで、融資の通りやすさや資金繰りの安定性が大きく変わります。
