赤字でも継続できる資金管理
赤字が続いていても、資金管理の方法によっては会社を継続させることが可能です。
中小企業では、利益よりもキャッシュフローの方が事業継続に与える影響が大きく、赤字だからといって直ちに経営が行き詰まるわけではありません。
むしろ、資金繰りを正しく管理し、キャッシュの出入りを可視化していれば、赤字期を乗り越えて事業を再構築できます。
ここでは、赤字でも会社を続けるための実践的な資金管理方法を解説します。
赤字でも会社は潰れない。資金が尽きると潰れる
赤字だから倒産するのではなく、資金が尽きると倒産します。これは金融機関が最も重視しているポイントでもあります。会社にキャッシュがあり、支払うべきタイミングで支払いができていれば、赤字の期間があっても経営は継続できます。
特に、創業期や設備投資直後は赤字になりやすく、黒字化まで時間がかかるのは一般的です。
問題は、赤字を理由に資金繰りが悪化し、入金より支出が先行してしまう状態です。このような状況を避けるためにも、資金繰り表を定期的に作成し、将来のキャッシュの動きを把握することが必要です。
資金繰り表によって「いつ、どれだけ資金が不足するか」が明確になれば、追加融資や支払いスケジュールの調整など、早めの対策が打てます。金融機関も資金繰り表の提出を重視するため、融資交渉の際にも大きなプラスとなります。
赤字を乗り切るための支出コントロール
赤字期に最も重要なのは「支出の管理」です。売上をすぐに増やすことは難しくても、支出をコントロールすることで資金の減少ペースを抑えることは可能です。
支出管理で最初に見直すべきは固定費です。特に以下の費用項目は削減効果が大きく、金融機関からも評価されやすいポイントです。
家賃
人件費(シフト調整、役員報酬の見直し)
通信費やサブスクの整理
外注費
保険料の見直し
固定費を改善するだけで、資金繰りに与える影響は非常に大きくなります。固定費削減は金融機関からも「経営改善に取り組んでいる」と評価されるため、追加融資の依頼時にも説得力を高める結果につながります。
また、支払いサイトの調整も効果的です。仕入れ先との交渉により支払い期日を延長してもらう、月末払いを翌月に変更してもらうなどの改善ができれば、キャッシュアウトのタイミングを後ろにずらすことができます。
追加融資・借換えの活用も選択肢になる
赤字期には、追加融資の活用も有効な手段です。
ただし、漠然と「赤字なので融資をお願いします」と依頼するのではなく、資金が不足する理由と期間、今後の改善計画を整理して説明することが必要です。
また、既存融資の借換えによって返済額を軽減する方法もあります。金融機関は、返済負担が軽減されることで資金繰りが安定すると判断すれば、借換えに協力してくれることがあります。
特に、運転資金と設備資金の返済計画が混在している場合、返済期間を延ばした借換えをすることで毎月の資金負担を大きく下げられます。
返済額を軽くすることで資金繰りが安定し、黒字化に向けた改善策にも投資しやすくなります。
キャッシュインを増やすための短期施策
赤字期を乗り切るためには、キャッシュインを増やす取り組みも欠かせません。すぐに効果が出る施策として、次のような方法があります。
売掛金の早期回収
在庫の圧縮
スポット売上の獲得
不要資産の売却
値引き依存の営業を減らす
特に、売掛金の早期回収は効果が大きく、月末までのキャッシュの動きが大幅に変わる場合があります。回収条件を見直す、前受金を活用する、といった方法も資金繰り改善には有効です。
また、過剰在庫はキャッシュを寝かせている状態ですので、処分やセールによって現金化することで資金繰りは改善します。
短期的なキャッシュ確保は赤字期の延命ではなく、黒字化に向けた再スタートを切るための重要なステップです。
赤字期こそ、月次の経営管理が企業の信用力を高める
赤字が続いている状況でも、資金管理を徹底していれば「会社の信用力」は落ちません。金融機関は数字そのものよりも、「数字を管理しているか」「改善策が打てているか」を重視する傾向があります。
毎月の試算表、資金繰り表の提出は、経営管理ができている企業として評価されます。これにより追加融資や借換えの際にもスムーズに話が進みます。
赤字でも事業を継続するためには、資金管理の精度を高め、資金が尽きる前に手を打つことが必要です。赤字期はネガティブに見えがちですが、改善策を進めることで財務体質は確実に良くなります。
事業を続けるために必要なのは、利益ではなくキャッシュです。資金の流れを正確につかみ、早めに金融機関と連携することで、赤字の時期を乗り越えることができます。
