資金調達の種類と使い分け
事業を継続・成長させるためには「どの資金調達方法を、どのタイミングで使うか」の判断が非常に重要です。
資金調達には複数の選択肢があり、それぞれメリット・デメリット、向いている事業フェーズが異なります。
事業フェーズ別の借入については、「お悩み:どの金融機関から借入すべき?事業フェーズ別の失敗しない選び方ガイド」もご参照ください。
また、資金調達の際には、運転資金と設備資金の違いを理解していなければなりません。「運転資金と設備資金の違いを正しく理解することで融資が通りやすくなる理由」もご覧ください。
この記事では、代表的な資金調達方法を整理し、どのように使い分けるべきかを分かりやすく解説します。
融資は最も利用しやすい資金調達手段
中小企業で最も使われている資金調達は、金融機関からの融資です。
融資は次のような種類があります。
・日本政策金融公庫(創業・運転・設備)
- 創業初期でも利用しやすい
- 無担保・無保証の制度が多い
- 審査は比較的柔軟
- 創業融資の中心となる存在
・信用保証協会付き融資
- 銀行が貸し、保証協会が保証する仕組み
- 実績が少ない企業でも利用可能
- 金利はやや高めだが借りやすい
- 運転資金に使いやすい
「信用保証協会付き融資を通す方法」もご参照ください。
・プロパー融資
- 保証協会を利用せず銀行が単独で貸す
- 審査は厳しいが長期的な信頼関係に向く
- 利率が比較的低く、大きな投資向け
融資は「安定した返済計画」を組める点が最大のメリットです。
補助金は返済不要だが、事業内容との整合性が必須
補助金は返済不要である一方、「採択されないリスク」や「後払いである点」を理解しておく必要があります。
主な特徴は次の通りです。
- 返済不要で資金負担が軽い
- 採択率は30〜50%が一般的
- 審査は書類の完成度に大きく左右される
- 入金まで半年以上かかる場合がある
- 事業の目的と整合性があるかが重要
融資との併用(つなぎ資金)も多く、適切な組み合わせが効果的です。
「補助金と融資のどちらを優先すべきか悩んでいる方へ」も合わせてご覧ください。
助成金は条件を満たせば受け取れる“確実性の高い”制度
助成金は厚生労働省系が中心で、条件を満たせば比較的高確率で受給できます。
代表例は次のとおりです。
- キャリアアップ助成金
- 研修系助成金
- 働き方改善系の助成金
特徴としては、
- 返済不要
- 雇用環境の整備が前提
- 審査は補助金よりハードルが低い
- 入金まで時間がかかる
融資・補助金と比べて「目的が人材・雇用に限定される」ことがポイントです。
※厚生労働省所管の助成金については、行政書士が申請することは出来ません。
出資(エクイティ)は返済不要だが難易度が高い
ベンチャー企業や成長性の高い事業では、出資による資金調達もあります。
特徴は次のとおりです。
- 返済が不要
- 事業成長が早い場合に有効
- 投資家の支援やネットワークが活用できる
- 経営権の一部が投資家に移る場合がある
- 審査が非常に厳しい
一般的な小規模事業者による利用は少なく、成長型ビジネス向けです。
売掛金の早期資金化(ファクタリング)
資金繰りが厳しい企業が利用するケースが多い方法です。
- 売掛金を早期に現金化できる
- 審査が早く、即日資金化も可能
- 手数料は高い(5〜20%程度)
- 慢性的に利用すると財務が悪化する
緊急資金としては有効ですが、継続利用は避けるべきです。
クラウドファンディングはプロモーションと資金調達を兼ねる
クラウドファンディングは、資金調達と同時に宣伝効果も得られる手段です。
- 新商品のテストマーケティングに最適
- 支援者が増えると、SNSで認知が広がる
- 運営手数料がかかる
- 支援が集まらない可能性もある
「集客を兼ねた資金調達」として中小企業でも利用が増えています。
各資金調達方法の使い分け方
それぞれの特徴を踏まえると、以下の使い分けが最も現実的です。
- 創業時:日本政策金融公庫の融資+少額補助金
- 設備導入:保証協会付き融資 or プロパー融資
- 運転資金不足:保証協会付き融資
- 新サービスの立ち上げ:補助金+融資
- 雇用強化:助成金
- 新商品の市場テスト:クラウドファンディング
- 緊急資金:ファクタリング(最終手段)
複数の制度を組み合わせることで、資金繰りを安定させながら事業を成長させることができます。
まとめ
資金調達にはさまざまな方法がありますが、最も重要なのは「事業の状況に合った適切な組み合わせを選ぶこと」です。
融資・補助金・助成金を上手く使い分けることで、不要な資金不足を避け、事業を安定的に成長させることができます。
