資金繰り表の作り方|初めてでも迷わない実務ステップ(行政書士・元金融機関職員が解説)

資金繰り表は、事業が安定して続いていくために欠かせない重要な管理ツールです。
しかし、初めて作る場合は何から手を付ければ良いのか分からないという声をよく聞きます。
この記事では、元金融機関職員として、多くの事業者の資金管理を見てきた経験をもとに、初めての方でも順番に進めれば完成する「実務ステップ」で解説します。

難しい専門用語はなるべく使わず、手を動かしながら作れる内容にしています。

資金繰り表とは何か

資金繰り表とは、これからの入金と支出を月(または日)ごとに整理し、将来の資金残高を確認するための表です。
売上の計上時期と入金時期がズレる業種や、月によって支払いが大きく変動する事業では特に重要です。

資金繰り表があることで次のようなメリットがあります。

  • 資金不足が発生する時期をあらかじめ把握できる
  • 不足が出る前に金融機関に相談できる
  • 支出の偏りに気づきやすくなる
  • 経営判断がスムーズになる

特に創業期や事業拡大期は、資金の動きが不安定になりやすいため、早めに作っておくことが安心につながります。

資金繰りについて知りたい方は「資金繰りとは?中小企業が必ず押さえておくべき基本と改善方法」もご参照ください。

ステップ1:期間を決める

まずは作成する期間を決めます。
一般的には「半年〜1年」の資金繰り表を作るケースが多いですが、業種によっては「3ヶ月ごとに見直す」や「1年分+月次の細かい管理を追加する」などの方法もあります。

初めての場合は、まずは 12ヶ月分を作る ことをおすすめします。
これにより、季節変動や年末の支払いなども把握しやすくなります。

ステップ2:入金予定をまとめる

次に、入金に関する情報を整理します。
入金は売上だけではありません。以下のようなものも入金に含まれます。

  • 売上代金の入金(現金・振込など)
  • 補助金や給付金の入金
  • 借入金の実行
  • 持続化給付金・保険金などの臨時収入
  • 事業主借(代表者からの資金投入)

入金は「いつ発生した売上が、いつ入金されるのか」を整理することがポイントです。
請求書発行日と入金日がズレる場合は、入金ベースで記載します。

ステップ3:支出の項目と金額を整理する

資金繰りに影響する支出を一覧にします。
支出は毎月発生するものと、年に数回だけ発生するものに分けて整理すると見落としが減ります。

主な支出例は次のとおりです。

  • 家賃
  • 人件費
  • 光熱費
  • 仕入れ代金
  • 外注費
  • リース料
  • 借入金返済(元金と利息)
  • 税金や社会保険料
  • 車検・保険料など年に1回だけの支出
  • 事業主貸(代表者への支出)

支出を整理する際は、過去数ヶ月の通帳やクレジットカード明細を確認すると、漏れを防ぐことができます。

ステップ4:月ごとに入出金を記入する

ここまで整理した内容を、月ごとの表に落とし込みます。
入金欄に「入ってくるお金」、支出欄に「出ていくお金」を書き、最終的に「月末残高」を計算します。

月末残高がマイナスになる月がある場合は要注意です。
そのまま放置すると、実際の運転資金が足りずに困る可能性があります。

月末残高がマイナスになる場合は、次のように対策を検討します。

  • 入金タイミングの見直し(早期入金の交渉など)
  • 支出の時期を調整する
  • 短期的な借入で補う
  • 経費の優先順位を見直す

早めに調整することで、大きなトラブルを避けることができます。

ステップ5:毎月更新する

資金繰り表は一度作れば終わりではなく「毎月更新する」ことが重要です。
事業は常に変化するため、予定どおりにいかないこともあります。

更新のタイミングとしては、

  • 月初に前月実績を反映する
  • 月末に翌月分を再確認する

といった方法がおすすめです。

更新を続けることで、資金の動きがだんだん読みやすくなり、経営判断が確実になります。

資金繰り表を作る際のよくある失敗

資金繰り表作成でよくあるつまずきポイントを紹介します。

売上は多いのに資金が足りなくなる

入金が翌月・翌々月になる業種ではよく起きる問題です。
売上計上日ではなく「入金日ベース」で記載することが大切です。

借入金返済を記入していない

返済金は毎月必ず発生するため、抜けていると大きな誤差が出ます。

税金や保険料を忘れる

年に数回の支払いは忘れやすいため、年間予定を必ず書き込んでおきます。

表を作って満足してしまう

継続的に更新していくことで効果が高まります。

まとめ

資金繰り表は「難しそう」と感じる方も多いですが、実際は手順に沿って整理していけば誰でも作成できます。
特に創業期や、売上・支出の波が大きい事業では、資金繰り表があるだけで安心感が大きく変わります。

  • 期間を決める
  • 入金を整理する
  • 支出をまとめる
  • 月ごとに記入する
  • 毎月更新する

この流れを繰り返すだけで、資金管理の質が大きく向上します。

資金繰りは事業の生命線ともいえる部分です。
早めに作り、早めに把握し、必要に応じて調整することで、事業を安定させることができます。

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