見積書のNG例/OK例
補助金申請で最もトラブルが多い書類の一つが「見積書」です。
採択の可能性を左右するだけでなく、交付申請・実績報告の場面でも不備が続出し、結果として「補助対象外になってしまう」ケースも珍しくありません。
この記事では、実務で頻発するNG例を具体的に示しながら、審査で評価されやすいOK例のポイントを整理します。
補助金は書類の“整合性”が非常に重視されます。
見積書はその中でも最も基礎的で、かつ失敗しやすい資料ですので、ここで確実に理解しておきましょう。
見積書でよくあるNG例とその理由
1. 金額の内訳がなく「一式」で記載されている
最も多いNGパターンです。
【NG例】
- 機械設備導入 一式 1,000,000円
- ホームページ制作 一式 500,000円
【なぜNGか】
- 評価者が内容を判断できない
- 妥当性が確認できず、補助対象外にされやすい
- 実績報告でも差し戻しになる
補助金審査は、「金額の妥当性」を必ず確認するため、
項目の分解(仕様・数量・単価)がない見積書は原則通りません。
2. 見積書の宛名が「法人名」と一致していない
【NG例】
- 宛名が屋号のみ
- 個人名になっている
- 旧社名・略称になっている
【なぜNGか】
- 補助金は“申請者が行う事業の経費”が対象のため、
宛名不一致は「他者の経費では?」と見なされるためです。
特に実績報告では、宛名違い=補助対象外 になるケースが多発します。
3. 見積書の日付が申請期間と合っていない
【NG例】
- 申請期間より前の日付
- 申請後の交付決定より前に契約済みの日付
- 日付の記載がない
【なぜNGか】
補助金には「交付決定前の契約は対象外」というルールがあり、
日付の矛盾があると即アウトになるからです。
4. 仕様・型番が不明確
【NG例】
- PC一式
- 機械設備(名称のみ)
- ソフトウェア導入費(詳細なし)
【なぜNGか】
- 審査側が比較検討できない
- 必要性・効果が説明できない
- 相見積りも適正と判断できない
特に設備投資系では“仕様の曖昧さ”は大きな減点になります。
5. 消費税の扱いが不明確
【NG例】
- 税別か税込か不明
- 但し書きに「総額」としか書いていない
- 内税表示で端数が合わない
【なぜNGか】
補助金は原則「税抜価格」で計算するため、不明確な見積書は審査が進みません。
審査側が評価しやすいOK例(良い見積書の特徴)
1. 仕様・数量・単価が明確
【OK例】
- 産業用プリンター
・型番:XXXX-01
・数量:1台
・単価:850,000円
・小計:850,000円
・合計:935,000円(税抜850,000円)
ポイント:
- 仕様と型番があると“具体性が高い”
- 価格の妥当性を審査しやすい
- 相見積りとの比較が容易
2. 宛名が法人名(または個人事業主名)で統一されている
【OK例】
宛名:行政書士だいとう事務所 様
または
宛名:大藤 寛之 様(個人事業主の場合)
統一されているだけで、審査が非常にスムーズになります。
3. 交付決定前に契約していないことが証明できる日付
【OK例】
見積日:令和〇年〇月〇日(申請期間内)
ポイント:
- 「注文日」や「契約日」を書かないのが望ましい
- 見積書に日付があるだけで実務上かなり通りやすくなる
4. 投資の効果とつながる項目が明記されている
審査では、
「見積書の内容 → 事業計画の効果」
の一貫性が評価されます。
例:設備投入で生産効率が上がる場合
- 能力向上が読み取れる仕様
- 作業時間短縮がわかる性能
- 外注費削減に直結する内容
これらがあると採択率は確実に上がります。
5. 相見積りがスムーズに比較できる形式
適切な相見積の条件:
- 同じ仕様で2〜3社
- 同じ数量・型番
- 違いは価格や条件のみ
これだけで審査側は大幅に理解しやすくなります。
採択率を上げる「見積書のそろえ方」実務フロー
ステップ1:仕様書(簡易でもOK)を作る
- 型番
- 性能
- 数量
- 用途
- 効果(効率化・売上増など)
これをもとに複数社へ依頼すると、見積書の品質が揃います。
ステップ2:見積書依頼のテンプレートを使う
企業に送る依頼文に以下を明記するとスムーズです。
- 補助金申請に使用すること
- 相見積りを取ること
- 型番・仕様を統一すること
- 税抜表示で作成を依頼すること
ステップ3:見積書のチェックリストで確認する
□ 宛名は一致しているか
□ 日付は申請期間内か
□ 仕様が分解されているか
□ 税抜価格が明記されているか
□ 相見積りが同仕様になっているか
□ 効果・目的と一致しているか
これだけで不備の大半は防げます。
まとめ:見積書は“融資・補助金の生命線”
融資・補助金の審査では、見積書は単なる価格資料ではありません。
「事業の妥当性」「費用の合理性」「計画の実現性」を示す核心資料です。
審査で評価される見積書の特徴は次の通りです。
- 一式ではなく、仕様・単価・数量が明確
- 宛名が申請者と一致
- 日付が交付決定の前後と矛盾しない
- 数字が事業計画と一貫している
- 相見積りの比較がしやすい
逆に、NG例が1つでもあると差し戻されることが多いため、
「見積書を整える=採択率アップ」に直結します。
