失敗しない事業計画書の書き方|補助金・融資に通りやすいポイント(行政書士・元金融機関職員が解説)
事業計画書は、補助金申請や金融機関への融資相談で最も重視される書類のひとつです。
しかし、初めて作る場合は「何を書けば良いのか分からない」という方がほとんどです。
この記事では、元金融機関職員として実際に多くの計画書を見てきた視点から、審査で評価されやすいポイントを押さえた「実務的な書き方」を解説します。
補助金にも融資にも共通する内容なので、初めての方でも安心して使える構成にしています。
事業計画書の役割とは
事業計画書は、単なる説明資料ではありません。
事業の方向性、課題、収益性、資金計画などを整理することで、事業を成功させるための“地図”になります。
また、計画書は次のような立場の人が読む資料でもあります。
- 融資の担当者
- 補助金の審査員
- 出資・支援を検討する支援者
読み手は、あなたの事業を知らない第三者です。
そのため「分かりやすさ」「根拠の明確さ」「数字の整合性」が特に重視されます。
書き始める前に押さえたい3つのポイント
事業計画書を作り始める前に、次の3点を明確にしておくと作成がスムーズになります。
- 事業を始める理由
- 誰に、何を、いくらで提供するのか
- 資金が必要になるタイミング
この3つがあいまいなまま書き始めると、途中で内容がぶれてしまい、説得力が弱くなります。
事業計画書の構成と書き方
ここからは、読み手に伝わりやすい構成に沿って、具体的な書き方を解説します。
1. 事業の概要
最初に、事業の全体像を簡潔にまとめます。
書く内容の例は次のとおりです。
- 事業の目的
- どんな商品・サービスを提供するのか
- ターゲットとなる顧客
- 市場の特徴
読み手が最初に目にする部分なので、難しい表現を避け、短くまとめることが大切です。
2. 事業を始める背景と強み
事業を始めた理由には、読み手が納得する“物語性”が求められます。
例えば次のような内容です。
- これまでの経験や実績
- 顧客の課題を知ったきっかけ
- 自身の強みやスキル
- 他社にはない独自性
金融機関にとって、運営する人の信頼性は非常に重要です。
「なぜあなたがこの事業を始めるのか」を丁寧に書くことで、評価されやすくなります。
3. 商品・サービスの詳細
提供する商品やサービスを具体的に説明します。
- 料金
- 原価
- 提供プロセス
- 顧客のメリット
- 他社との差別化ポイント
文章だけで伝わりにくい場合は、図や工程説明があると分かりやすくなります。
4. 市場規模と競合分析
審査で特に重要なのは「客観性のある市場分析」です。
曖昧な表現ではなく、根拠を示しながら説明します。
- 市場規模
- 顧客の属性
- 競合他社の強みと弱み
- 自社が取れるポジション
競合が多い市場でも問題ありませんが、差別化ポイントが明確である必要があります。
5. 売上計画と費用計画
もっとも重要なのが、数字の整合性です。
売上計画を作る際は、次のように「根拠」を具体的に示します。
- 客単価 × 予想顧客数
- 仕入れや原価率
- 外注費・固定費
特に補助金や融資では、この部分が甘いと審査でマイナスになります。
6. 資金計画(資金繰りの見通し)
資金の出入りを整理し、いつ・どれだけ資金が必要かを示します。
- 初期費用
- 運転資金
- 借入金の返済予定
- 補助金の入金時期
補助金は「採択されてもすぐに入金されない」ため、資金繰り表と合わせて示すと説得力が上がります。
7. 実行スケジュール
事業開始から運営までのスケジュールを簡潔に示します。
- 開業準備
- 設備導入
- 営業開始
- 販促活動
- 人材採用のタイミング
行動の順序とタイミングが整理されていることで、計画性の高さを示すことができます。
事業計画書でよくある失敗
説明が抽象的でイメージできない
「頑張ります」「認知拡大を図ります」だけでは伝わりません。
誰に、何を、どのように売るのかを明確に書くことが重要です。
売上計画が現実的でない
根拠のない売上予測は信用されません。
客単価や回転率など、算出方法を記載するだけで説得力が上がります。
経費が少なすぎる
実際より経費が少ない計画は、後で資金不足を招きます。
書き手の熱意が伝わらない
文章の丁寧さや論理性も審査の印象を左右します。
まとめ
事業計画書は、補助金や融資を受けるための書類であると同時に、事業の成功率を高めるツールでもあります。
- 理由と背景を明確にする
- 数字の根拠を示す
- 読み手に分かりやすくまとめる
この3点を意識するだけで、計画書の質は大きく変わります。
しっかり準備された事業計画書は、読み手に安心感を与え、補助金や融資の通過率も高まります。
